『 PERFECT DAYS 』 nowhere column vol.23

セピア色の静寂に包まれた曙(あけぼの)
チュンチュンと初々しい雀のさえずり
サッザッと規則正しく道をはく竹ボウキ

下町古民家風の六畳一間の寝室
スゥーフーと畳布団で深い呼吸をひとつ
自然と定刻に目覚める

過去の面影が炙り出すモノクロの夢想から
カラフルな現実の世界へたおやかに導かれ
新たなる一日が始まる

映画のタイトル『パーフェクトデイズ』
何とも美しい語感
生き様は人それぞれ…

他の誰にも理解されなくても良い
自分が納得できていればそれで良い
都会の喧騒でしなやかに生き抜く孤高の男

生まれながらにして備わっている完璧志向
自らが描く完璧(理想の世界観)に向けて
誰もが自分の歩幅で努力している

その努力が報われず反省し生き続ける日々
過去の失敗や挫折を内省する暇もないまま
満たされぬ思いを引きずりながら苦悶する

煩悩だらけのビジネスの荒波から離脱し
生業として選んだ公共トイレ清掃員(主人公)
社会のインフラを支える不可欠な仕事だ

一心不乱に修行僧の如く働くシニアの背中
その男の何気ない所作に生き様が滲み出る
瞳の奥の輝きが物語る無言のメッセージ

いつもの公園のベンチに腰掛け空を見上げる
木漏れ日が織りなす優しい揺らぎに包まれて
牛乳を片手にサンドイッチを頬張る至福の時

自分ひとりで過ごす時間
いまここの喜びを感じられる空間
誰からも邪魔されない自分だけの居場所

独りで落ち着くサードプレイス
いまここを感じながらマインドリセット
家と職場以外でくつろげる癒しのスポット

きっと平凡な日々の中に非凡な幸せがある
それに気付けぬまま時を駆け抜けているだけ…
一瞬の出来事にも心でそっと手を合わせよう

ルーティンが穢(けが)れなき心の安らぎと
満たされた凡庸な一日を与えてくれている
些細なモノに対して敬意を払ってみよう!

小さな気付き(幸せ)はすぐそこにある
気付かない、目に見えない、掛替えのない、
『完璧な日々』を感得できているだろうか?